2019/11/25 23:39

ヴィンテージのお洋服を扱っていると、どうしても年代や国、どのような用途で着られていたのか分からないお洋服に出会います


テイラーやメーカー仕立ての物ならば丁寧に、年代などの情報が記載されていたりもしますが

手作りとなればもってのほか

作った本人ならまだしも、沢山の人の手を渡ってきた古着ですから

私の手に辿り着いた頃にはその情報はかなり薄れてしまっています。



ファッションは能書きよりも感覚で楽しむものよ!


なんて頭では思いつつも、より知ってしまうと楽しみも感動も倍増するもので、、

そうやってビンテージに魅了されて、どっぷり深みにハマってしまい、、、まぁ、それはさておき




フランスで出会ったこちらのポンチョもその内の一人

ハテサテ、いつの時代からやって来たのやら、、


私は普段古着を見るときはまず生地から見るようにしています

ジップやボタンなんかも判断材料ではありますが、古くなったらいくらでも交換できてしまう

でも生地本体となったらそうはいきませんからね


このベロアは70年代初期頃までに見られるとても上質なベロアです

しっとりと吸い付くような滑らかさに、漆黒のような艶めかしい肌触り

女性にも男性にも色を乗せてくれる、現代の量産生地には無い雰囲気の物で、

個人的にはこの時代のベロアが一番好きです



ポンチョ自体古くから在りはしたものの

大衆に好まれてよく着られていたのは60年代後半頃からで

コクーンのようなシルエットや、このボタンもなんだか60~70年代のような雰囲気を醸し出していて

でも、なんか引っかかる、、、

“その頃ってもっとポップなんだよなー”

真っ黒でベロアで、なんとも言えない絶妙な襟のライン

何処となくエレガントな雰囲気








表のお顔で分からない時は裏のお顔も拝借させて頂いて、、っと。

40~60年代初頭のコートによく使われるこれまた質の良い裏地素材

この艶、堪らないですよね。


と、よく見ると全て手縫いで作られているではないですか!

なんて規則的に丁寧に縫われていることでしょう

一針一針から伝わってくる温かみに心が解れてくる程です。。


(なんだか書いていて楽しみ方が少々マニアックなのでは、、という一抹の不安は考えないことにして、、)






実は60年代頃はもう裁縫文化もマシン化されていて、手縫いの物は殆どありません
そう、この温かみも50年代頃までなんです

先ほどの60年代がポップという話ともリンクするんですが、
戦中~戦後の貧しさから、徐々に豊になっていく時代の雰囲気に似つかわしくない
素朴な温かみがあるんですよね

もしやこれって、デザインや雰囲気を先取りしている40年代の物なのでは、、!
はたまた40年代のエスプリを織り交ぜた懐古好きな60年代の物なのか、、

だとしたらなかなかレアな一枚なのかも知れません
これを作った人はかなりハイセンスな人だったのかも知れませんね


一枚のお洋服の情報を得ようとすると、少しずつ背景まで見えてくるような気がして
そんな物語を想像しては、広がる世界と小さな出会いに
心が豊かになっていくんですよね ♪